激撮！日本の緊縛 (1980)

　　ガイラこと小水一男の書いた秀逸な脚本を映像化したピンク映画は、名匠・渡辺護らしさを十二分に堪能できる傑作。
　　因果な人生に翻弄された女性三代の年代記的抒情詩として、終戦直前から40年余の時を描いた意欲的な作品である。
　　これほどのスケール感で撮られたピンク映画には、そうそうお目にかかれない。詩人で映画監督の福間健二さんも、本作を渡辺監督の個人的ベスト5の一本として挙げている。
　　もちろん、低予算のピンク映画故に登場人物も...展开映画的仕掛けも限られてはいるのだが、登場人物を早苗・純子・陽子の女三人と高田、建児にしぼって限定的な世界観で描くことで却って物語的な因果が浮かび上がる形になっている。
　　玉音放送をバックにした濡れ場や天皇皇后両陛下の写真のカットインといったシーンの数々にも、目を奪われる。
　　若き下元史朗の精悍さ、陸軍の亡霊の如き市村譲のサディスティックな迫力も素晴らしいが、やはり本作の見所は三代の女性を演じる日野繭子で決まりだろう。
　　可憐な女性の早苗、世を斜に構えるようなデカダンスを漂わせる純子、したたかに強く生きる陽子を見事に演じ分ける日野は、名実ともにこの時期のピンク映画を代表するスター女優であった。
　　他の出演者は、渡辺組の常連である岡尚美と杉佳代子。名優堺勝朗も、いい味を出している。
　　本作は、ピンク映画が尖鋭的だった時期のモニュメンタルな一本である。
　　改めて、渡辺護という作家の凄さを体感して頂きたい。